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第23回日本心臓血管発生研究会で発表

第23回日本心臓血管発生研究会しました(2024.11.13-14淡路島)

藤井 瀬菜, 福井 成美, 金橋 徹, 松林 潤, 今井 宏彦, 米山 明男, 大谷 浩, 山田 重人, 高桑 徹也 
ヒト胚子期から胎児初期における肺静脈と左心耳の形態形成 Morphogenesis of the pulmonary vein and left atrial appendage in human embryos and early fetuses
福井さんの修士研究を紹介いたしました。

ヒトの左心房および肺静脈は、原始心房由来の心房前壁、左心耳、心房中隔と、大部 分が肺静脈に由来する後壁、肺静脈で構成されている。受精後4週ころ、左房後壁の一 部が突出し、肺静脈の原基である共通肺静脈を形成する。共通肺静脈は両側に分岐を 形成し、4本の肺静脈を形成したのち、左心房壁に順次取り込まれ融合する。この融合 の時期に関する記載は、受精後8~11週と様々であり統一されていない。そこで本研究 は、ヒトの胚子期から胎児期における、左心耳を含む左心房と肺静脈を形態学的およ び定量的に評価した。対象は、Carnegie stage (CS)16~23(受精後約6~8週に相 当)のヒト胚子標本23体とヒト胎児期初期の標本19体の、phase-contrast X-ray computed tomographyおよびmagnetic resonance imaging画像とした。画像解析 ソフトウェアAmiraを用いて、左心房と肺静脈を立体再構成した。形態学的評価におい て、各個体にて心膜が反転する位置を心膜腔の境界として定義し、共通肺静脈や4本の 肺静脈(左上、左下、右上、右下肺静脈)と心膜との位置関係を同定した。その結 果、CS19以降の4個体を除く全個体において、4本すべての肺静脈の周縁で心膜が反転 していた。この結果は、心臓のdorsal mesocardiumの接続が退縮したときに、2つの 肺静脈(右肺静脈と左肺静脈)と4つの肺静脈で心膜が反転する位置がほぼ同時に決定 することを示す。また、3次元立体像より、4本の肺静脈が左心房へ向かって外側から 内側へ接線方向に接続する様子を観察した。右肺静脈の左心房への侵入角度は、左肺 静脈よりも大きかった。定量的評価として、(1)各肺静脈間の距離、(2)静脈内腔の断 面積と扁平率、(3)左心耳の開口部の断面積と扁平率、(4)左心耳と左心房の各容量お よび容量比を算出した。(1)上肺静脈と下肺静脈の間の距離は、左肺静脈と右肺静脈の 間の距離よりも短かった。(2)4本の肺静脈のうち、左上肺静脈は断面積が最も小さ く、最も扁平化した形状であった。他の3本は断面積と扁平率に差を認めず、類似の形 態であった。(3)左心耳の開口部は、発生に伴い断面積が大きくなると同時に平坦にな る傾向を認めた。(4)左心耳は中心部の容積が大きく、発生が進むにつれて葉状構造と して左室を覆うように拡大していた。左心房全体の容積^(1/3)は、頭殿長にほぼ比例 して増加した。本研究は、ヒトの胚子期後期から胎児期初期にかけて、肺静脈の左心 房壁への取り込みや左心耳の形態形成を定性的、定量的に明らかにした。また、これ まで注目されていなかった肺静脈の心膜腔への取り込み時期についても明らかにし た。

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