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2023年度修士論文発表会が開催

修士論文発表会が開催されました(2024.2.5). 今年から、大学院教育コースに分かれての発表となりました。

26. Formation of tendinous intersections in the human fetal rectus abdominis. MRIを用いたヒト胎児腹直筋における腱画形成過程の解析 岩佐結生

25. Comparison of Left-Right Differences in Major Blood Vessel Diameter in Human Fetuses. ヒト胎児における主要血管径の左右差の比較検討 中井尚一

24. Three-dimensional analysis of the area around the ankle joint in the human fetus ヒト胎児期における足関節周辺の三次元解析 松田幸樹

卒業研究発表会(後半)が開催

卒業研究発表会(後半)が開催されました(1/29,30)

ヒト胎児脳の一次脳溝形成過程の検討 熊谷美優

ヒト胎児期における骨盤内器官形成過程の三次元的解析 篠原李欧

卒業研究発表会(前半)が開催

咽頭、鼻腔、口腔領域の検討

卒業研究発表会(前半)が開催されました(12/27,28)

ヒト胎児期初期における咽頭、鼻腔、口腔の形態変化の観察 青江春菜

ヒトの胎児期初期における心室中隔の形態的変化 倭友希

臨床検査技師国家試験を受験する学生は12月いっぱいで卒業研究は終了です。このあとしばらくは国家試験の受験勉強に励んで合格してください。

2023年度; 修士論文概要

Formation of tendinous intersections in the human fetal rectus abdominis. MRIを用いたヒト胎児における腱画形成過程の解析 岩佐結生

DTIを用いた腹直筋腱画の抽出

【背景】腱画は腹直筋筋腹を横断する線維性の帯である。これまでは成人を対象に、解剖学および病理組織学的研究によって腱画の形状や位置についての評価がなされてきた。一方でヒト胎児を対象とした研究は少なく、腱画の出現時期や発生的要因については明らかにされていない。本研究では拡散テンソル画像(DTI)を用いて胎児期初期における腱画形成過程を検討することを目的とした。
【対象と方法】島根大学医学部解剖学講座保有する外表奇形の見られないヒト胎児標本15例(頭殿長:39.5-93.7mm)を対象とした。高解像度MRI撮像を行って取得したMR画像をもとに腹直筋の三次元立体像を作成し、形態計測を行った。DTIは組織内部に存在する水分子の動き(拡散)を画像化したもので、水分子の拡散の方向は組織構造に依存しているため拡散異方性として定量化することができる。DTIを用いて腱画を検出可能なことがわかったので、その個数と位置、形状について評価した。
【結果】①腹直筋の形態:高さ・幅・厚みについて、すべて胎児の成長とともに増加傾向にあったが性差や左右差は認められなかった。腹直筋の臍帯輪より尾側に位置する領域(セクション(S)4)は他の3つの領域(S1、S2、S3)に比べて幅が小さく厚みがあった。 ②腱画の位置と形状の観察:立体像やT1強調像では腱画を検出できなかった。DTIを拡散異方性の指標であるFractional anisotropy (FA)でマッピングすると筋線維は高いFA値、腱線維は低いFA値を示したため、そのFA値の差によって腱画を検出できた。腱画の平均個数は3.1個(範囲:2.0~4.0)であった。腱画が2つのものの割合は21.4%、3つのものは50.0%、4つのものは28.6%であった。一般化推定方程式による多重ロジスティック回帰分析の結果、S1およびS2における完全型腱画のオッズ比はS4におけるものより有意に高かった(オッズ比[95%CI]: 14.85[4.37、50.51]、p<0.001;8.84[2.81、27.77]、p<0.001)。S3における不完全型腱画のオッズ比はS1におけるものより有意に高かった(オッズ比:7.4 [2.0, 27.2], P=0.003)。S4における腱画未検出のオッズ比はS1よりも有意に高かった(オッズ比:20.5 [3.1, 134.6]、P=0.002)。
【考察】腱画を2つ持つものの割合が成人の値より高いことから、腱画を2つ持つ標本では腱画の形成が進行段階であり、胎児の成長に伴ってS2で3つ目の腱画が形成されていく可能性が示唆される。腹直筋上部(S1,S2)では完全型の腱画が、腹直筋下部(S3,S4)では不完全型の腱画や未検出が多くみられるという特徴に関しては成人の先行研究と一致していた。DTIによる腱画の検出は頭殿長45.8mm(妊娠約11週)のサンプルから可能となったが、これは腹直筋が成熟した腱画を有するのは妊娠17週目までとするこれまでの組織学的所見よりも早い。したがって、本研究はDTIが腱画の早期分化を検出できる可能性を示唆している。 【結論】DTIによって胎児期初期における腱画形成過程の観察ができた。さらに小さな個体での腱画検出が可能になれば、腱画の発生・発達過程の解明につながると期待される。

25. Comparison of Left-Right Differences in Major Blood Vessel Diameter in Human Fetuses. ヒト胎児における主要血管径の左右差の比較検討 中井尚一

【背景】ヒトの身体は一見左右対称に見えるが、ほとんどの内臓は大きさ、形状、位置の点で左右非対称である。この非対称性は正常な機能のために不可欠である。血管も例外ではなく、ヒト胎児でも大動脈弓や静脈管において定性的な左右差が知られている。一方で血管の左右差について定量的に比較検討した研究はあまり行われておらず、知見も乏しいのが現状である。そこで本研究では、ヒト胎児の主要な血管に着目し、左右差の定性的な知見を深めること及び定量的に比較検討することを目的とした。【対象】京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センターが保有するヒト胚子胎児標本24例、島根大学医学部解剖学講座が保有するヒト胎児標本6例、合計30例を高解像度MRIで撮像し、そのMR画像を対象とした (頭殿長: 26.8-225mm) 。標本は正常個体のうち、全身の血管が比較的良好に観察できるものを選択した。検討した血管は頭頸部・上肢の動静脈 (総頸動脈、鎖骨下動脈、腕頭静脈、内頸静脈、鎖骨下静脈) 、肺の動静脈 (肺動脈、上肺静脈、下肺静脈) 、腹部骨盤領域の動静脈 (腎動脈、総腸骨動脈、外腸骨動脈、内腸骨動脈、臍帯動脈、総腸骨静脈) である。【方法】①三次元可視化解析ソフトで対象血管の立体像を5例 (頭殿長: 45mm、89mm、105mm、148mm、198mm) 選抜して作成し、画像処理ソフトで立体像の厚さを色で可視化した。作成した立体像を「厚さ、分枝の傾き、分枝の場所」の3点に着目し、左右差の有無を観察した。②DICOM-viewerソフトで血管断面を楕円形に近似し、長径と短径を測定した。長径と短径の相乗平均を血管の太さの指標とした (血管径とする) 。血管径の値から計算した左右比にt検定を行い、左右比が有意か血管毎に調べた。③長径と短径から血管断面の楕円率を計算した。楕円率から計算した左右比にt検定を行い、楕円率の左右比が有意か血管毎に調べた。【結果】①頭頸部•上肢の静脈として腕頭静脈、内頸静脈、鎖骨下静脈を観察した。腕頭静脈では厚さで左右差があった。具体的には頭殿長105mm以降の3例で左腕頭静脈にだけ途中で厚みが増している部分があった。残りの観点では左右差はなかった。内頸静脈、鎖骨下静脈ではいずれの観点でも左右差はなかった。②総頸動脈の血管径の左右比は有意に左が大きかった。具体的には総頚動脈は左が右を基準に1.15倍太かった (右の血管径中央値0.37 mm、左の血管径中央値0.53 mm、p=0.004) 。肺動脈は有意に右が太かった。すなわち、肺動脈は右が1.17倍太かった (右0.63mm、左0.47mm、p<0.001) 。③総腸骨静脈の断面の楕円率の左右比は有意に右が大きかった。具体的には総腸骨静脈の楕円率は右が1.79倍大きい (右の楕円率中央値0.66、左の楕円率中央値0.38、p<0.001) 。上肺静脈の楕円率の左右比は有意に右が大きかった。すなわち、上肺静脈の楕円率は右が1.71倍大きい (右0.65、左0.38、p<0.001) 。①②③それぞれについて、他の血管の結果および考察も報告する。【結論】頭殿長26.8mmから225mmの胎児のうち、5個体について主要な血管の立体像を作成および観察し、左右差の観点から定性的な特徴を示すことができた。また頭殿長26.8mmから225mmの胎児について主要な血管の左右差を定量的な観点から示すことができた。

24. Three-dimensional analysis of the area around the ankle joint in the human fetus ヒト胎児期における足関節周辺の三次元解析 松田幸樹

胚子期の足関節周囲の骨格

【背景】ヒトの足関節部の肢位は脛骨、腓骨、および足根骨のうち距骨、踵骨に より主に決定される。発生 5 週目末に脛骨、腓骨、足根骨が順に出現し、それぞ れの形態形成は、互いの位置関係に影響を与えながら進行する。胎児の骨形成や、 胎児期のある時期における下腿の骨の成長などについて論じた研究はあるが、胎 児期の成長に伴う足関節周辺の骨の位置関係の変化について論じた研究は少な く、また定量的な評価が十分になされた三次元的研究も乏しい。そこで本研究で は、ヒト胎児固定標本の T1 強調画像、位相 X 線 CT 画像から立体再構成像を取得 し、ヒト胎児期における足関節周辺の骨の形成、それらの位置関係の変化の追跡 を試みた。 【方法】対象は京都大学医学研究科附属先天異常標本解析センター保有 28 体(内 7T-MR 撮像 24 体、位相 X 線 CT 撮像 4 体)と、島根大学医学部解剖学教室保有の 9 体(T1 強調画像)である。これらを画像処理ソフトウェア Amira を用いて下肢骨 の立体再構成像を作成した。次に同ソフトウェアで、解剖学的ランドマーク、各 骨(大腿骨、脛骨、腓骨、足根骨)の重心、関節周辺の各骨の表面情報 を取得し た。その後 Amira で得たデータをもとに、MATLAB により長管骨の軸、関節表面(膝、 距腿、距腓、距踵関節)の疑似平面を作成して下肢骨の位置関係の解析、成長の 変化の定量的な観察を行った。 【結果】作成した足関節周辺の立体再構成像の観察を行った。冠状面において胚 子期後期から CRL34~50 mmの範囲の個体では足関節は内転の状態が観察された。ま た矢状面では胚子期後期から CRL34~43 mmの範囲では底屈の状態が観察された。ど ちらの肢位も CRL60 mm辺りでほぼ中間位をとった。また脛骨長軸の角度と合わせ て、抽出した関節面に法線ベクトルを定義し、それらの角度の CRL 増加に伴う変 化、関節同士の関係性、肢位の変化にどの関節が影響を与えているのかを検討した。CRL 増加に伴い、冠状面では脛骨長軸、距脛関節面法線ベクトル、距踵関節 面法線ベクトルの変化が見られた。矢状面では脛骨長軸、距脛関節面法線ベクト ルの変化が観察された。脛骨長軸と関節面法線ベクトルの関係性を評価したとこ ろ、冠状面では距脛関節面と距踵関節面が、矢状面では距脛関節面が脛骨長軸と 高い相関を示した。 【結論】足関節周辺の立体像を作成することにより、中足骨を含む足根骨から脛 骨、腓骨の長管骨までの領域における骨の位置関係について、胚子期後期の CS21 から胎児期初期までの経時的変化を提供することができた。また、肢位の変化や 関節面の方向を座標上で表現することにより、成長に伴う変化を定量的に示すこ とができた。将来的に、胚胎児期の下肢周辺における異常診断に有益な情報を与 えることが期待される。

2022年度修士論文発表会が行われました

2022年度修士論文発表会が行われました (2/2-3, 第8講義室)

今年は、感染対策に留意しながら対面で行われました。聴衆を増え、日常を取り戻しつつあります。

Three-dimensional analysis of the umbilical vein and the ductus venosus at the human embryonic and early fetal stagesヒト胚子期・胎児期初期における臍帯静脈と静脈管の3次元的解析 磯谷 菜穂子

Morphogenesis of the pulmonary vein and the left atrial appendage in human embryos and early fetusesヒト胚子・胎児期初期における肺静脈・左心耳の形態形成 福井 成美
Three-dimensional imaging analysis of developmental process of posterior meniscofemoral ligament in rat embryo
ラット胎仔における後半月大腿靭帯の発生機序の三次元的解析
石田かのん

2022年度; 修士論文概要

Three-dimensional analysis of the umbilical vein and the ductus venosus at the human embryonic and early fetal stages
ヒト胚子期・胎児期初期における臍帯静脈と静脈管の3次元的解析 
磯谷 菜穂子

【背景】臍帯から心臓までの静脈系短絡路については、領域によって、発生機序や出生後の運命、隣接する器官や機能が異なることが知られている。これらの違いにより、この短絡路には領域ごとに形態学的、組織学的な違いがあることが予想される。本研究では、短絡路全体を俯瞰する総論的視点と、領域ごとに形態学的特徴を検討する各論的な視点の両面から各領域における形態・走行や血管壁の特徴を明らかにした。
【対象・方法】京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センター保有のヒト胚子、胎児期初期標本の立体情報計29例(位相CT;18例(Carnegie stage(CS)15~23)、MRI;11例(頭殿長(CRL)= 33mm~97mm))とヒト胚子標本の連続組織切片画像18例(CS15~23)を対象とした。位相CT、MRIの画像情報をもとに短絡路の立体像を作成し、1)立体像の観察2)血管内腔の大きさと形状の可視化3)空間座標を用いた走行・形態の解析4)定量的解析を行った。組織切片画像を用いて5)血管壁の組織学的検討を行った。
【結果】1)立体像の観察:臍帯静脈は臍帯輪から肝臓へ向かって走行し、肝臓内の方形葉と右葉の内下隅でいくつかの分枝を生じた。肝内臍帯静脈はさらに肝臓内を近位方向へ走行し、肝臓尾状葉の尾側端で三股に分岐した。この間、臍帯静脈の分枝は見られなかった。これらは例外なくCS15からCRL97mmまで観察された。
2)血管内腔の大きさと形状の可視化:CS15~17では臍帯静脈の臍帯輪周囲が最も太いが、個体が成長すると肝臓内の部分や下大静脈の部分へと最大内腔を持つ部分は変化した。臍帯静脈はCS21頃を境に内腔が不均一で凹凸がある形態から比較的円形で均一な形態へ変化した。
3)空間座標を用いた走行・形態の解析:短絡路の臍帯輪や椎体との位置関係は個体の成長によって腹腔内で変化し、胎児期ではより腹壁に近い位置を走行するようになった。短絡路の走行方向はCRL40mm頃までに正中面に平行し、CRL50mm頃からは平面上で頭尾方向へ立ち上がるような変化があった。プロクラステス解析では臍帯静脈の4つの形態パターンが明らかになり、このパターンは成長に伴って変化した。
4)定量的解析:短絡路の全長は成長に伴って増加した。全長に対する各領域の血管長の割合に大きな変化はなく、臍帯静脈が50%以上を占めたが、肝内と肝外の血管割合には変化があった。湾曲率はどの領域でも胚子期の小さい個体で比較的に高い傾向にあった。静脈管の湾曲率はCRL10mm頃までに急激に低下し、その後ほぼ一定であった。
5)血管壁の組織学的検討:臍帯静脈ではCS20頃から部分によって血管壁の厚みや肝臓との接着方法に違いが見られた。静脈管はほとんどの部分で血管壁が薄いが、CS20から入口部分に血管壁の隆起が限局的に見られた。 【結論】臍帯から心臓までの静脈系短絡路について、形成直後であるCS15から胎児期初期のCRL97mmまで立体像を作成し、その経時的変化を総論的視点と各論的な視点の両面から形態学的、形態計測学的、組織学的に明らかにした。

67. Isotani N, Kanahashi T, Imai H, Yoneyama A, Yamada S, Takakuwa T. Regional differences in the umbilical vein and ductus venosus at different stages of normal human development. Anat Rec (Hoboken), 2024, 307, 3306-3326.DOI:10.1002/ar.25421

Morphogenesis of the pulmonary vein and the left atrial appendage in human embryos and early fetuses
ヒト胚子・胎児期初期における肺静脈・左心耳の形態形成 
福井 成美

【背景】左心房は心臓心底部の大部分を形成する。心底からは4 本の肺静脈が流入し、前面側には狭窄部を介して左心耳が接合している。発生4週目末頃、左心房後壁から総肺静脈が突出する。その後、総肺静脈と4本の肺静脈の近位部は拡張し、左心房壁に取り込まれ、最終的に4本の肺静脈が左心房から直接突出する。左心耳は原始左心房に由来し、発生4週目に形成される。成人の左心耳は 1~4 つの分葉構造を持ち、内部は櫛状筋によって櫛状構造になっている。肺静脈の取り込み完了時期は文献によって様々であり、左心耳の形態形成については成人例のみ報告されている。そこで、高解像度の画像データと 3 次元情報から肺静脈の取り込み過程と左心耳の発生について検討する。

【対象と方法】ヒト胚子標本計 24 例、ヒト胎児標本計20 例とした。位相 CT 撮像を行って取得した CT 画像と高解像度 MRI 撮像を行って取得した MR 画像上で、肺静脈を観察した。MR 画像をもとに心臓部分の立体像を再構築し、肺静脈と左心耳の形態学的観察と定量的評価を行った。

【結果】観察された肺静脈の本数は、CS17~18 で 1 本、CS18~21 で 2 本または 4 本、CS22以降で 3 本または 4 本であった。肺静脈が 2 本以上ある標本では、CRLの増加に伴い、 左右の肺静脈の距離が長くなり、左右の肺静脈間の左心房の厚みも増加した。上下の肺静脈間の距離は左右の肺静脈間の距離よりも近かった。肺静脈が 2 本の場合、肺静脈は背側から左心房内に流入し、肺静脈が 3 本または 4 本の場合、肺静脈は左心房へ背側の外側から内側へ接線方向に入り込んだ。肺静脈の断面積については、左上肺静脈が最も小さい傾向にあり、他の3 本の肺静脈は類似していた。形状は左上肺静脈が最も扁平であり,他の 3 つの肺静脈は類似していた。左心耳の最も厚みのある部分は中心付近であり、そこから放射状に薄くなった。左心耳の開口部は CRLの増加に伴い断面積が増大し、扁平化する傾向にあった。

【結論】肺静脈の取り込みは CS18 頃から始まり、CS18~22 で完了すると考えられる。左上肺静脈の近位部は他の 3 つの肺静脈より断面積は小さく、より扁平である。胚子期後期より、3 本または 4 本の肺静脈は外側より左心房に流入し、左右の肺静脈より上下の肺静脈間の距離のほうが近い。左心耳は中心付近が最も厚く、そこから放射状に薄くなっていく。左心耳の開口部は CRL に伴い断面積が増大し、扁平化する。

[Background] The left atrium (LA) forms the bulk of the cardiac fundus. Four pulmonary veins (PVs) flow from the fundus, and the left appendage (LAA) is joined to the anterior side via a stenosis. Toward the end of the fourth week of development, the common pulmonary vein (CPV) protrudes from the posterior wall of the LA. The CPV and the proximal portions of the four PVs dilate and are taken up by the LA wall, and finally, the four PVs protrude directly from the left atrium. The LAA originates from the primordial LA and forms during the fourth week of development. The adult LAA has one to four lobe-like structures, and the interior of the LAA has a comb-like structure created by pectinate muscles. The time of completion of the PV uptake into the LA wall has been controversial in previous studies, and morphogenesis of the LAA has been reported only in adult cases. We provided the data showing the PV uptake process and the LAA development based on high-resolution image data and three-dimensional information.
[Materials & Methods] Twenty-four human embryos and twenty fetuses were selected for this study. The PV was observed on CT images obtained by phase CT imaging and MR images obtained by high-resolution MRI imaging. 3D images of the heart portion were reconstructed based on the MR images, and morphological observation and quantitative evaluation of the PVs and LAA were performed.
[Results] The number of PV was one from CS 17 to CS 18, two or four from CS 18 to CS 21, and three or four after CS 22. In specimens with two or more PVs, the distance between the left and right PVs increased with CRL, as did the reconstruction of the LA thickness between the left and right-sided PV. The distance between the superior and inferior PVs was closer than between the left and right-sided PVs. When there were two PVs from CS18 to CS 21, they flowed into the LA from the dorsal side; when there were three or four PVs, they entered tangentially into the dorsal part of the LA from the lateral to medial direction. Regarding the cross-sectional area of the PV, the LSPV was the smallest, while the other three PVs were similar. In shape, the LSPV was the most flattened; the other three PVs were similar. The LAA thickness was thickest near the center, and it became radially thinner from there. The LAA orifice increased in area and tended to become more flattened with CRL.
[Conclusion] The PV uptake is thought to begin around CS 18 and complete from CS 18 to CS 22. The proximal portion of the LSPV is smaller in cross-sectional area and circumference than the other three PVs and is more flattened. Four PVs enter tangentially into the dorsal part of the LA from the lateral to medial direction. And the distance between the superior and inferior PV is closer than between the left and right-sided PV. The LAA thickness is thickest near the center, and it becomes radially thinner from there. The LAA orifice is found to increase in area and become more flattened with CRL.

61. Fukui N, Kanahashi T, Matsubayashi J, Imai H, Yoneyama A, Otani H, Yamada S, Takakuwa T. Morphogenesis of the pulmonary vein and left atrial appendage in human embryos and early fetuses. J Anatomy 2023, in press, https://doi.org/10.1111/joa.13941

Three-dimensional imaging analysis of developmental process of posterior meniscofemoral ligament in rat embryo
ラット胎仔における後半月大腿靭帯の発生機序の三次元的解析
石田かのん

【目的】膝関節の後半月大腿靭帯(pMFL)は、膝関節安定への寄与や円盤状外側半月板(DLM)との関連が報告されているが、健常な膝におけるその発生過程は調査されていない。本研究では二次元的な発生過程の観察に加えて三次元再構成像を用いた解析を行った。倫理的制約のため、ヒトと膝の構造が類似し、複数の胎仔を得られるラットを対象とした。本研究の目的はラット膝関節のpMFLの発生過程を三次元的に解析し、他の膝関節構成体との関係を検討することであった。
【方法】胎生期16日目~21日目(E16~E21)のWistarラットの後肢の形態と位置をHE染色で確認した。次に、自家蛍光を画像化するepiscopic fluorescence image capture (EFIC)によって、E17~E21のそれぞれについて連続画像を撮影した。三次元像の再構成と計測は三次元画像解析ソフトAmiraで行った。pMFLの長さ、たわみ、角度、体積を測定した。前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、半月板の体積も測定し、pMFLを含む各構成体のE17の平均値に対する体積の割合を比較した。
【結果】pMFLはE17から観察され、全段階で大腿骨内側顆と外側半月板に付着していた。pMFLの長さ及び各膝関節構成体の体積はE19~E21の間に有意に増加したが、pMFLのたわみと角度には全段階を通して有意な変動は認められなかった。体積の割合は、E19まで全ての構成体が同程度の増加傾向を示したが、E20以降は半月板とPCLが顕著に増加した。
【考察】pMFLの長さや各構成体の体積がE19以降に有意に増加したのに対し、角度の変動が対象期間を通して少なかったことは、pMFLと周囲の構成体が位置関係を保ちながら発達することを示唆する。pMFLが大腿骨に付着する位置が高いとDLMを引き起こす可能性があり、今回の結果はDLMの発生機序の理解に役立つ可能性がある。また、ラットの後肢運動がE16~E19の間に増加するとの報告と比較するとpMFLの長さと各構成体の体積が顕著に増加する時期はこれの直後にあたり、発生過程は二段階に分かれていると考えられる。ラットはヒトと荷重のかかり方が異なるため、ヒト膝における発生過程についてさらなる研究が必要である。
【結論】ラットのpMFL及び膝関節構成体の発生過程を三次元的に解析した。本研究は正常なpMFL及び膝関節構成体の発生過程を提示し、解剖のより良い理解に貢献する。

Objectives: The posterior meniscofemoral ligament (pMFL) of the knee joint has been reported to contribute to knee joint stability and to be associated with the discoid lateral meniscus (DLM); however, its developmental process in healthy knees has not been studied. In this study, we analyzed the developmental process using three-dimensional (3D) reconstructed images in addition to two-dimensional observations. Owing to ethical constraints, rats were selected for this study because of the advantage of their similar knee structure to humans and the availability of multiple fetuses. The purpose of this study was to analyze pMFL development in rat knee joints three-dimensionally and examine its relationship with other knee joint components.
Methods: The shape and position of hindlimbs of Wistar rats at E16-E21 were confirmed with HE-stained tissue sections. Serial episcopic fluorescence images of the hindlimbs of E17-E21 were respectively captured by episcopic fluorescence image capture (EFIC), from which 3D images were reconstructed using Amira software. The pMFL length, deflection, angle, and volume were measured in 3D images. The volumes of the anterior cruciate ligament (ACL), posterior cruciate ligament (PCL), and menisci were also measured and the ratio of the volume to the mean value at E17 of each component, including pMFL, was compared.Results: pMFL was observed from E17 and was attached to the medial femoral condyle and lateral meniscus at all stages. The pMFL length and volume of each knee joint component increased significantly between E19 and E21; no significant variation was observed in the pMFL deflection and angle throughout all phases. The Volume ratios showed that all components showed similar increasing trends until E19, but the menisci and PCL increased significantly from E20.
Discussion: While the length of pMFL and volume of each component increased significantly after E19, there was little variation in angle throughout the stages studied, suggesting that the pMFL and surrounding components developed with a positional relationship. A higher attachment position of the pMFL to the femur may cause DLM , and the present results may help in understanding the mechanism of DLM development. When compared with a report that hindlimb movement in rats increases between E16 and E19, the time when the length of pMFL and volume of each component significantly increased is just after this, indicating that the developmental process is divided into two phases. As rat knees are loaded differently from human knees, further studies are required on the developmental process of human knees.
Conclusion: The developmental process of pMFL and knee joint components in rat embryos was analyzed three-dimensionally. This study improves our understanding of the developmental processes of the normal pMFL and knee joint components.

Ishida K, Ishikawa A, Yamada S, Takakuwa T, Aoyama T, Three-dimensional imaging analysis of the developmental process of posterior meniscofemoral ligaments in rat embryos. Cells Tissues Organs 2024, in press, DOI: 10.1159/000536108

’22卒業研究発表会が行われました

卒業研究発表会が行われました (2022.12.27-28 第5講義室)

今年は、国家試験受験する学生は12月に発表を行うことになりました。医学科の先生から質疑応答をいただき、有意義な会になりました。

68. 生理的臍帯ヘルニア期のヒト中腸ループと腸間膜の経時的構造変化 石田七彩

67. 拡散テンソル画像を用いた水晶体線維細胞の配向性の検討 三ツ井梨真

66. MR 画像を用いたヒト胎児期における小脳形態形成の検討 吉永晴香

2021年度修士論文発表会が行われました

掛谷さん、黄さんの修士論文発表会が行われました。(2/3-2/4 杉浦ホール於)

今年度も発表者と審査委員と少人数の教員のみがホールに集まり、他の視聴者は遠隔で聴講するという形になりました。お疲れ様でした。

Return of the intestinal loop and superior mesenteric artery to the abdominal coelom after physiological umbilical herniation.

生理的臍帯ヘルニアの還納過程における3次元的解析  掛谷真樹

Fixation of the colorectum in the abdominal coelom during normal human development

ヒト胎児期における大腸の還納、固定時期の解析 黄 柔婷

 

内容を詳しく