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金橋助教(研究)

骨盤の性差は

いつから出現するのか?

ヒトの骨盤には思春期以降、明確な性差が認められます。しかし、胎児期における骨盤の性差については、見解が一致しておらず、”胎児期のヒト骨盤に性差は存在するかもしれないが、顕著な性差があるかは不明である (Verbruggen and Nowlan, 2017)”という見解が一般的でした。

われわれは、京都大学医学研究科附属先天異常標本解析センター及び島根大学医学部解剖学講座が所蔵する、受精後9週から23週に相当する頭殿長 50~225mmのヒト胎児標本72体のMRI画像を取得し、様々な部位の計測と重回帰分析を行なって性差を検討しました。その結果、骨盤上口の前後径、恥骨下角、および坐骨棘間径と大骨盤横径の比に性差が認められました。

Kanahashi T, Matsubayashi J, Imai H, Yamada S, Otani H, Takakuwa T. Sexual dimorphism of the human fetal pelvis exists at the onset of primary ossification, Communications Biology, 2024, 7:538, https://doi.org/10.1038/s42003-024-06156-y

京都大学ホームページにも紹介されました。https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2024-05-20-1

従来考えられてきた時期よりも早く、一次骨化の開始期には既に骨盤に性差が存在することを示唆する本研究結果は、ヒト胎児骨盤の形態が男女で異なることを理解する上で重要な知見を提供するものです。

我々はさらに骨盤の性差についての理解を深めるために、以下の手法を用いて検討を進めています。

  • 骨盤傾斜の変化、男女の違いの検討
  • 相同モデルを用いた形態変化、男女の違いの検討

骨盤傾斜

矢状面における骨盤の傾斜具合を指します。成人では姿勢や運動機能の評価のための指標として用いられています。

胎児期初期から中期にかけて、後傾から前傾へ変化することがわかりました。

複数の角度を測定し、男女差について検討しています。(2025年3月 解剖学会で発表)

相同モデル

形態解析の分野で使われる技術です。異なる形を持つものを比較しやすくするための方法で、「共通の基準点を使って形を統一し、違いを分析する」技術です。例えば、人の顔の形を調べるとき、目や鼻、口の位置を基準にしてデータをそろえることで、顔の特徴を比較しやすくなります。同じように、骨や臓器の形を分析するときにも使われます。