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病理学の勉強について

A.ロビンスについて

今年(2008年度)、私は「ロビンス基礎病理学」を病理学総論、各論に指定しました。講義が終了して、「教科書」に内容が沿っていないという抗議を少なからず受け、大変驚き、また少々反省も致しました。というのは、私が学生のころの医学生の常識の一つとして、「「教科書」を、いわれるままに買ってはいけない。実際によくみて、情報を集めて、必要なら先輩からもらえ、ただし、先輩がくれる教科書はろくな教科書ではない」というものがあったからです。実際、医学生が、教科書として推薦されているものを全部そろえると年間で数十万円になってしまうこともあります。いわれるままに買っていては大変です。私は、学生時代貧乏で、勉強意欲もたいしたことなかったので、教科書はほとんど買いませんでした。
ロビンスには[Pathologic basis of the disease]というさらに厚い原著があり、そこから要点を抜粋したものがBasic Pathology、そして、その日本語訳が「ロビンス基礎病理学」です。ロビンスはいい教科書です。病気がどういう機序でおきるのかという点に力点をおいた病理学の教科書は、残念ながら、他にお薦めできるものがありません。多くの医学部で、ロビンスは教科書として取り上げられています。翻訳を嫌い、原書を教科書にしている大学もあるくらいです。病気の成り立ちという面、病理形態学的面と、分けて記載している点も良い点です。日本人が著者になっている病理学の本では、病気の機序についての説明が不明解であること、内容が組織形態、診断に偏っていることなど、いくつか問題点があります。ということで、教科書は何がよいかと聞かれたら、私は「可能であれば、原著でかつ[Pathologic basis of the disease]を読むのがよいです。」と答えます。

B. 通読できる「病理学」教科書を一通り読む。

しかし、実際には「病理学」は単位をとることが第1目標で、内容が面白く、将来役にたてば、なお結構という人が殆どでしょう。そういう学生さんには、分量、値段、内容、どれをとってもロビンスは不適当です。読まない本を買うことほど無駄なことはありません。
通読できる「病理学」教科書を一通り読み、病理学というものがどういうことを対象にしているか、その概観を押さえるのにいいでしょう。看護学生をおもに対象にした教科書[1-3]は、値段も手頃で、図もきれいで、説明もまとまっています。わかりにくい臓器の肉眼像、顕微鏡像には模式図が添えてあったり、興味ある記事はコラムにおさめたり、キーワードを巻末に並べたり,簡単な問題がついていたりして、勉強をしやすいように工夫されています。
これらは、病理学の各論が弱いという欠点があります。 [4-7]は、その点は、よりよいと思います。ただ、値段を下げる必要からか写真の質が悪いものが多いので、病理画像に興味がある人には、不満が残るでしょう。
書店で手に取ってみて、読みきれると思ったら購入してもよいでしょう。図書室にも何冊か所蔵されています。

病理学参考書

1. カラーで学べる病理学 Nouvelle Hirokawa
2. 疾病のなりたちと回復の促進「1」病理学 医学書院
3. 疾病のなりたちと回復の促進「6」病理学 金原出版
4. 新クイックマスター病理学 医学芸術社
5. シンプル病理学 南光堂
6. エッセンシャル病理学 医歯薬出版
7. 絵説Dr.レイの病理学講義 金芳堂
8.図解ワンポイントシリーズ3 病理学 医学芸術社
9.イラストとエッセンスわかる病理学 恒心社出版
10.はじめの一歩のイラスト病理学 羊土社
11.なるほど、なっとく、病理学 南山堂
12.集中講義 病理学 Medical VIEW

C.病気についての知識を増やす勉強

現代社会においては、一部の人を除くと、若者が病気と向き合ったり、本質的な死の恐怖や逆に健康のありがたみみたいなものを、実感する機会は極めて低くなっています。みなさんのほとんどは、若くて健康で、病院や病気には縁遠い生活をこれまで送ってこられたのではないでしょうか。そういった学生にいきなり「病気の本質とは」と始めてもついていけないかもしれません。これは「臨床医学」関連の内科、外科講義についても同じで、いきなり講義で病気の話を始めても、それがどれくらい伝わるかは疑問です。
みなさんが病気についての知識がもう少し増えると、病理学をふくめた病気に関する講義は、格段に面白くなるであろうと思います。そこで、病気についての勉強を楽に始められる本をいくつか取り上げます。

13.学生のための疾病論 人間が病気になること 医学書院
病気を個人のストーリーとして語り、その後に要点の解説を加えるという形式をとっています。文学的にはさほどすぐれた文章ではありませんが、病気の理解には役立ちます。また、病気は個人の生活、人生と、切り離せないものであるということも朧げにわかるでしょう。みなさんが将来対象とする病気とは、そういった残酷な面を持ちます。人間健康科学科の図書室に何冊かありますので、病理学など専門基礎の講義が始まる前に、借りて読むのもよいかもしれません。

14.完全病理学 各論 Element版 学際企画
1ページに1疾患、計200症例の説明と病理画像、そしてとその解説が加えられています。病理画像にシェーマをつけ加えることで、画像における個々の要素の読み取りが容易となり、病理画像の面白さを引き出すように工夫されています。非常によく出来た本であると思います。たまに散文がみられること、写真が小さめであるのが残念です。

15.病気が見えるVol 1-10 Medic Media
これらは、書店では国家試験対策書として置かれてあることが多い本です。「病気が見える」は、内科、婦人科の国家試験必出疾患症状、病態、検査法、治療などを、わかりやすい図表、イラストでまとめたものです。病気についてのessentialな知識を得られる、わかりやすい、覚えやすいと、試験対策書の要素を満たしている。また、病態など、病理学で扱う内容も含まれている。内容も比較的詳しく侮れません。病院で働きだしてからも役に立つでしょう。

16.Visual note  Medic Media
上記「病気が見える」をさらに受験、暗記用に特化したもの。強烈なイラスト、語呂合わせなど、賛否が分かれる本であると思います。私のような立場のものが、この本を薦めることは、よくないかもしれませんが、病気の知識を増やすという観点から取り上げます。受験生の評判はよいようです。

17.ビジュアルブックシリーズ 学研

15.病気が見えるに対抗して出されたシリーズです。両者が競い合ってより分かりやすいものにしてほしいと思います。

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