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a) 博士論文

2020年8月

藤井瀬菜

The bronchial tree of the human embryo: an analysis of
variations in the bronchial segments

(ヒト胚子期の気管支樹:区域気管支の多様性の検討)(J Anatomy 2020, 237, 311-322.掲載済み)

気管支の中枢部分は葉気管支と区域気管支から成るが、多くの成人肺の解剖学的研究においてこの典型的な構造から逸脱した多様な分岐構造が報告されている。これまでに気管支の多様性が生じる過程を明らかにした研究はない。本研究は、Carnegie stage (CS) 15〜23のヒト胚子標本の位相CT画像を用いて作成した気管支樹の三次元立体像に解析を加えることで、胚子期における気管支の多様性を検討した。形態観察および区域気管支までの同定をおこない、各葉の分岐次数を算出した。CS15からCS16の観察結果より、右上葉は右中葉と左上葉に遅れて形成することが示された。CS17~19において、区域気管支と亜区域気管支が、同一ステージの個体間で形成の程度にばらつきを示しながら形成していた。分岐次数は各葉にてCSの進行とともに増加した。右中葉の分岐次数の中央値は他の4葉と比較して有意に低かった。CS20~23の気管支樹における区域気管支について、全5葉にて14種類の形態を同定した。本研究にて同定した形態は、すべて成人の気管支にて報告のある形態に含まれていた。よって、区域気管支の多様な構造は胚子期に決定する可能性が示唆された。本研究は、詳細な形態変化情報と正確な分岐次数を算出することにより、これまで明らかでなかった胚子期の気管支形成について新たな知見を与えたものと考える。

Fujii S, Muranaka T, Matsubayash J, Yamada S, Yoneyama A, Takakuwa T. The bronchial tree of the human embryo: an analysis of variations in the bronchial segments. J Anatomy 2020, 237, 311-322. doi: 10.1111/joa.13199.

Fujii S, Muranaka T, Matsubayashi J, Yamada S, Yoneyama A, Takakuwa T. Bronchial tree of the human embryo: categorization of the branching mode as monopodial and dipodial, PLoS One, 2021, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0245558

Matsubayashi J, Okuno K, Fuji S, Ishizu K, Yamada S, Yoneyama A, Takakuwa T. Human embryonic ribs all progress through common morphological forms irrespective of their position on the axis, Dev Dyn 2019, 248, 1257-1263, doi: 10.1002/dvdy.107

Okuno K, Ishizu K, Matsubayashi J, Fujii S, Sakamoto R, Ishikawa A, Yamada S, Yoneyama A, Takakuwa T. Rib cage morphogenesis in the human embryo: A detailed three-dimensional analysis. Anat Rec 2019, 302, 2211-2223, doi: 10.1002/ar.24226

Ishiyama H, Ishikawa A, Kitazawa H, Fujii S, Matsubayashi J, Yamada S, Takakuwa T, Branching morphogenesis of the urinary collecting system in the human embryonic metanephros, PLoS ONE 13(9): e0203623. doi: 10.1371/journal.pone.0203623

2020年1月

金橋 徹

Relationship Between Physiological Umbilical Herniation and Liver Morphogenesis During the Human Embryonic Period: A Morphological and Morphometric Study

(ヒト胚子期にみられる生理的臍帯ヘルニアの発生要因について‐肝形成との関連に基づいた形態及び形態計測学的検討) (Anat Rec 2019, 302, 1968-1976, 掲載済み)

ヒト胚子期に形成される一次腸ループは、臍帯内の胚外体腔中へ一時的に脱出後(生理的臍帯ヘルニア [Physiological umbilical herni; PUH] )、胎児期初期に腹腔内へ還納する。PUHの原因は、同時期に肝臓が急速に成長して腹腔の多くを占める結果、腹腔が一過性に一次腸ループを入れるには足りないため、と1899年に報告されてから詳細な解析は行われていない。2018年に報告した肝臓形成異常群の中から(Kanahashi et al)、Carnegie stage (CS)21の肝臓低形成、無形成4例にPUHが確認された。PUHの発生要因をさらに検討するため、上記4例と正常2例を用いて肝臓の形態形成との関連に基づいた詳細な形態観察と形態計測による解析を行った。肝臓無形成1例(AG1)を除く3例は、盲腸が正常例と同様に上腸間膜動脈の左側に位置していたが、AG1は腸ループの先端に位置していた。腸ループの遠位端にあたる胚外体腔と腹腔の境界部分は正常例とAG1では腸管が直線的にみられたが、残り3例は境界部分に二次腸ループがみられた。上部消化管(胃、十二指腸)と膵臓は4例全てで胃の噴門部と、膵臓・十二指腸の接合部の2点が正常例とほぼ同じ位置を示したが、その他の部位に偏位がみられた。肝臓低形成・無形成4例と正常例では、腸ループの長さや腸ループが胚外体腔へ出ている割合はほぼ同じであった。4例の腹腔体積値は正常例と比較して明らかに小さかったが、腹腔内の腸管体積推定値は正常例とほぼ同等であった。このことから、腸管の成長やPUHの発生は肝臓の成長とは無関係で、PUHは中腸と腹腔スペースの両者がほぼ正常に成長することによって引き起こされることが強く示唆された。以上の研究はヒト胚子期に起こるPUHの解明に貢献し人体発生学や胎児診断に寄与するところが多い。

38. Kanahashi T, Yamada S, Yoneyama A, Takakuwa T. Relationship Between Physiological Umbilical Herniation and Liver Morphogenesis During the Human Embryonic Period: A Morphological and Morphometric Study. Anat Rec 2019, 302, 1968-1976. doi: 10.1002/ar.24149.

18. Kanahashi T, Yamada S, Tanaka M, Hirose A, Uwabe C, Kose K, Yoneyama A, Takeda T, Takakuwa T, A novel strategy to reveal the latent abnormalities in human embryonic stages from a large embryo collection, Anatomical Record, 299,8-24,2016  10.1002/ar.23281(概要), *299(1),2016の表紙に採用されました。DOI: 10.1002/ar.23206 (cover page)

2017年 12月

白石直樹

脳の様々な表現(CS23)

Morphology and morphometry of the human embryonic brain: A three-dimensional analysis

(ヒト胚子期における脳の三次元形態計測学的解析)

(NeuroImage, 2015, 115, 96-103、掲載済み)

ヒトの発生時期のうち、組織と器官を急速に形成する器官形成期は先天異常の発生の可能性が高い時期であり解析に重要な時期である。京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センターが保有する外見上、傷や先天異常がないヒト胚子群から、2.35TのMR顕微鏡で撮像されたCarnegie Stage(CS)13~23のヒト胚子立体画像を用いて、脳実質と脳室の形態形成について立体化像の形態変化の詳細な観察と定量学的な検討を加えた。脳実質の厚みの変化を色彩表示する方法、及び内外から大脳壁の厚さ分を削り、残った部分を肥厚部として描出するという方法を用いて可視化した。脳実質の体積はCS13からCS23間に164.4倍に形態変化を伴いながら著しく増大した。前脳、中脳、菱脳の体積もそれぞれ増大した。小脳はCS20に初めて観察され、菱脳に対する小脳の体積比はCS20の約7.2%から、CS23では12.8%と大きく増大していた。胚子体積に対する脳実質体積比はCS15からCS23の期間で11.6〜15.5%と大きな変化はなかった。前脳部の肥厚部はCS16から見られ、その解剖学的位置は大脳基底核、視床、内包と合致した。CS17以降には神経核が発達し、特に前脳部の大脳基底核付近、菱脳部の基板や小脳部が不均一に肥厚していくことがわかった。CS20になると前脳部や菱脳部で厚さの不均一性が目立ち、CS23では著明であった。これらの不均一な肥厚が、胚子期における脳の複雑な屈折や進展に影響を及ぼしている可能性がある。今回、提示した手法は神経核の発達を観察する上で非常に優れた方法であり、胎児期の脳発達の観察、解析に応用可能と考えられる。以上の研究は器官形成期のヒト脳の発生の解明に貢献し人体発生学、脳発生学や胎児診断に寄与するところが多い。

Shiraishi N, Katayama A, Nakashima T, Yamada S, Uwabe C, Kose K, Takakuwa T, Morphology and morphometry of the human embryonic brain: A three-dimensional analysis, NeuroImage, 2015, 115, 96-103, 10.1016/j.neuroimage.2015.04.044, (概要),

健康科学 : health science (2018), 13: 40-41