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ご挨拶 _ 高桑徹也

Dr. Takakuwa
アムステルダム近郊の列車内で

ヒト胚子の発生は、まだ十分に解かれているとはいえません。例えば、新生児の約3%とされる生まれつきの障害(先天異常)のうち病理解明されたものはいまだに一部にすぎません。先天異常の原因を知るには正常のヒト胚子の発生をより深く知る必要があります。私たちがおもに検討している器官形成期は、先天異常発生に重要な時期です。この時期を詳細に検討することは、現在知られる先天異常発生の病理を知る手がかりとなるでしょう。また、近年進歩を遂げている出生前の画像診断の分野でも正常なヒト発生についての詳細な知見が求められています。

ヒト胚子の発生研究は、1900年初頭に米国カーネギー発生研究所で(カーネギーコレクション)始まった標本の大規模収集とその詳細な観察に始まります。この点でヒトの発生学は多くの自然科学の分野(自然人類学や考古学、あるいは分類学、進化学)と共通の側面がありますし、病理診断学とも類似しています。ヒトの古典的な発生学は、1960年台を境に研究者の数を大きく減らしました。ヒトを材料とする以上、当然、人体実験のようなことはできません。古典的な観察研究に限界を感じた研究者の多くは、モデル動物を用いた実験発生学へ移行しました。また、人工中絶の方法の変化、妊娠検査の普及さらに近年の倫理的な意識の変革等は、ヒト胚子の取得を難しくしています。

私たちの研究は、上述のカーネギーコレクションと双璧をなす”京都コレクション”等からMR顕微鏡位相コントラストXCTなど、最新の画像取得法を応用して取得されたヒト胚子・胎児の3次元データを用いて、ヒトの発生の ’見える化’ を行っています。このようなヒト胚子研究は、世界的にもほとんどありません。3次元的に精確に表現できること、コンピュータ上で多くの個体を扱えること、定量性をもたせられることなどなど、多くの特長があり、古典的なヒト発生学では成し得なかったことが可能になっています。また、ヒト発生の ’見える化’ により、知見の修正、追加、新規発見が得られています。

人がうまれる前の世界はまだまだ知らないことの多い特殊な世界ですが、私たちは研究を通じて少しでも明らかにして行きたいと思います。みなさんをふくめ、すべての人々が通ってきた生まれる前の世界を私たちとともに探求してみませんか。

■ Privateなこと 

2012.9. Edinburgh

平成20年4月1日付で大阪大学大学院医学系研究科病態病理学より着任致しました。その時々のポジションで全力を尽くすことをモットーに、現在まで職務に励んでおります。

(趣味)硬式テニス

(他好きなもの)Apple (Macintosh) コンピュータ、マニュアル車、振り子時計、エアプランツ、バランスチェア、Eテレ(ピタゴラスイッチ、びじゅチューン、テキシコー、カラスは考える等)

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