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2021年4月
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西谷さん、鳥居さんの胎児心臓の解析がJAHAに掲載

西谷さんの修士論文、鳥居さんの卒業論文;胎児心臓のDT-MRIによる解析がJAHAに掲載されました。ヒトの心筋の構築の青写真は胚子期末(CS20-23, GSA8W)には、すでに形成されていることをDT-MRIデータから明らかにしました。

本研究成果は、京都大学HP(トピックス)でも紹介されました。

ヒト胎児心臓の心筋線維方向を追跡 -受精後8週の心筋線維は成人と同じ配列をする-  外部リンク[京都大学HP(トピックス)]

概要

心臓は受精後3週頃には拍動を開始し生涯拍動を続けます。全身に効率よく血液を送るために心筋線維は立体的に規則的に配列される必要があります。近年、拡散テンソルMRIを用いて、心筋線維がどのように配列されているかについても検討できるようになりました。成人では心室の壁を構成する心筋線維は、層状に内側から外側にかけてゆるやかに向きを変えて配列することが示されています。胎児では、胎齢20週ころには成人と同様の心筋線維配列を示すことが知られていますが、拍動開始から20週の間の心筋線維の配列は不明でした。京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 高桑徹也 教授、山田重人 同教授、情報学研究科 今井宏彦 助教、兵庫県立大学応用情報科学研究科 原口亮 准教授らの研究グループは、京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センターが所蔵しているヒト胚標本20体を用いて、ヒト心臓の心筋線維の配列を拡散テンソルMRIを用いて検討しました。その結果、心室の壁が厚みをもち始める胚子期後半の段階において、心筋線維の配列は、成人と同様であること証明しました。今回の結果は、先天性、後天性心疾患の原因解明、診断、治療等に関わる重要な知見と考えられます。

1.背景

心臓は受精後3週頃には拍動を開始し生涯拍動を続ける、生きるために必須の臓器で、成人では200-300gあります。心臓の大部分は心筋という特殊な筋肉から作られています。特に心室は心筋が袋状になり、全身に効率よく血液を送るために心筋線維が規則的に配列される必要があります。心筋線維の配列は、解剖学者Torrent-Guaspの心筋バンド説(心臓の壁を構成する心筋を広げていくと、1枚の帯状のものになる)が長い間信じられていました。近年、MRIという機器を用いて、心臓を取り出さずに、その形態や構成する物質の性質を調べることが可能になり、心筋線維がどのように配列されているかについても拡散テンソルMRI(DT-MRI)法という解析方法を用いて検討できるようになりました。心室の壁を構成する心筋線維の向きは、どの壁においても、層状に内側から外側にかけてゆるやかに向きを変え、らせん状に配列することが示されており(メッシュモデル)、心筋バンド説は否定されています。

ヒトに心臓の心筋線維の配列は、いつごろからどのように形成されるのでしょうか。これまでの研究では、胎齢20週ころにようやく成人と同様の配列を示すことが報告されています。そうすると、拍動開始(3週)から20週の間も、心臓は拍動しているわけですが、その間、心筋の配列はどうなっているのかという疑問が湧いてきます。そこで我々は、ヒト心臓の心筋線維の配列を24週の胎児から発生をさかのぼって検討することにしました。(図1)

2.研究手法・成果

心筋の壁が組織学的に形成されるには、心臓が2心房2心室の4つの部屋に別れ、冠状動脈という血管が形成され、心筋への血流が確保されるカーネギーステージ(CS)22(第8週中頃)であることがわかっています。そこで、それよりも若いCS20(第8週初め)までを解析対象としました。

解析の成功のためには、良質なヒト胚子標本の確保と、小さい標本を解析するために解像度の高い撮像装置、撮像条件の検討、解析法の確立が重要です。(胚子期後半の心臓は米粒ほどの大きさしかありません!!)

良質なヒト胚子標本として、附属先天異常標本解析センターが収集、保管している、ヒト胎児大規模標本群(京都コレクション)を使用しました。この標本群は、世界最大規模の研究リソースとして知られており、その利用については京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部附属病院 医の倫理委員会の承認のもとで研究が行われています。撮像装置としては、医学研究科医学研究支援センターが保有している前臨床用7T-MRIを用いました。撮像の対象及び目的に特化させた撮像条件と直径19mmの高感度MRIコイルを併用してDTI撮像データの質の改善を行いました。

その結果、心室の壁が形成され厚みをもち始める胚子期後半の段階(CS20-23)においても、心筋線維の配列は、成人と同様の配列を示すことを示すことができました。(図2、3)

3.波及効果、今後の予定

心臓の病気には、発生過程の異常に基づくものが多くあります。その意味で、今回心臓の動力の源である心筋の配列過程を経時的に追求できたことは大きな意義があります。ただ、心拍動の開始から8週までの期間については、装置の解像度の問題から現在の方法での解析が難しく今後の課題と言えます。今回の結果は、先天性、後天性心疾患の原因解明、診断、治療等に関わる重要な知見で、その発展に貢献することが期待されます。また、今回得られたDT-MRI撮像、解析技術は、心臓以外の他の臓器の形態形成の解析にも応用できるものと考えられます。

<研究者のコメント>

胚子期後半の心筋線維の配列がすでに大人の配列と同様というのは、当然とは言い切れません。発生学の原則として、“ヒト胚子はその発生の各段階で生きており、各段階で適切な状態を維持している”(Heuser & Streeter 1941)があります。それに従えば、心臓(心筋)は、成人の完成図を目指して性急な成長をするのではなく、発生段階の心臓の形状や他の諸器官と協調して、心筋の走行や分布、成長が異なることも十分に想定されることだからです。

<修士論文の概要>

Nishitani S, Torii N, Imai H, Haraguchi R, Yamada S, Takakuwa T, Development of helical myofiber tracts in the human fetal heart: Analysis of myocardial fiber formation in the left ventricle from the late human embryonic period using diffusion tensor magnetic resonance imaging. Journal of the American Heart Association, 2020,  19(9) doi:10.1161/JAHA.120.016422

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