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視覚器の形成

眼球の発生はCS10で神経溝周囲の前脳部に生じる視溝から始まる7-9)。CS11では、眼柄が明瞭となり神経管が外側に膨らみ、眼胞と呼ばれる眼の原基へと分化する9)。CS13で眼胞の外側に網膜原基が発生すると、表皮外胚葉に接近し、その接した部分の外胚葉は厚みを増し水晶体原基となる9)。CS14では、網膜原基が陥入をすることで眼胞は凹状に変形し眼杯となる7-9)。眼杯は2種類の層からなり、内側(眼杯内板)は多列で厚い網膜神経層で、外側(眼杯外板)は立方形でメラニン色素をもつ薄い網膜色素層となる7)

この頃、2つの層の間は網膜内腔隙により隔てられており、CS20頃までにその内腔隙は消失するが、完全に2層が癒合することはなく、様々な衝撃により網膜剥離が起こるとされている9)。同時期に眼柄の腹側に切れ込みが生じ眼杯裂ができ、後に硝子体動脈が通るが、この眼杯裂は一時的なものでCS16頃には閉鎖する7)。この眼杯裂が正常に閉鎖しなかったものをコロボーマという9)。また、眼胞が眼杯へと変わるときに水晶体原基が眼杯の凹みに陥入し水晶体窩を形成し、CS15には水晶体原基と表皮外胚葉が分離し中空の水晶体胞ができ、中空に水晶体線維が形成されCS19には水晶体胞の内腔は消失し水晶体となる7-9)。水晶体の外側では、間葉組織が分化して角膜上皮が形成する7)。CS20 になると、網膜神経層から出た視神経線維が眼柄の内壁に沿って伸長し、外側膝状体に達する7)。外側膝状体は視床領域の一部で、視覚情報の処理を行う。CS23までに眼柄の内腔が視神経線維によって消失し視神経が形成される9)。CS22頃には、眼杯周辺の間葉組織が脈絡膜、強膜へと分化する7,8)

このように眼球の基本的構造は胚子期のうちに形成される。先天性の眼球の形成不全は、胚子期のどの時期に起こるものかに依存しているといえる。また、眼球と脳の発生には密接な関係があり、眼球の先天的な奇形の存在は、脳に異常がある可能性を示唆する9)

外眼筋の発生

眼筋には内眼筋と外眼筋の2種類がある。内眼筋は眼球内に存在する眼筋で、毛様体と虹彩からなり、外眼筋は眼球の外側に存在する眼筋で眼球運動をつかさどり、4本の直筋(上直筋、下直筋、内直筋、外直筋)と2本の斜筋(上斜筋、下斜筋)からなる11)

上直筋は上内側、下直筋は下内側、内直筋は内側、外直筋は外側、上斜筋は上外側、下斜筋は下外側へ眼球を回転させる11)。また、斜筋は傾面での立体視を容易にする役割がある12)

動眼神経支配を受ける外眼筋(上直筋、下直筋、内直筋、下斜筋)とそれ以外の外眼筋とでは由来原基が異なる10)。前者は脊索前板由来の中胚葉(premandibular condensation)、後者は上下顎に存在する中胚葉(maxillomandibular mesoderm)から発生する10)。CS11頃に脊索前板からpremandibular condensationが発生し眼杯に向かって発達していく10)。CS14で最初にpremandibular condensation内に上直筋の原基が、CS16で内直筋、下直筋、下斜筋の原基がみられ、そのうち下直筋と下斜筋は同じ原基から発生する10)。premandibular condensationが形成されるCS11では、顎弓の背側から眼胞の腹側へ向かって覆いかぶさるようにmaxillomandibular mesodermも形成され、CS13で外直筋、CS14で上斜筋の原基がそれぞれ確認される10)。上斜筋原基の背側は眼窩壁に沿って、腹側は眼胞に向かって発達し、CS17で腹側の末梢が眼球に入り込むように尾側へ折れ曲がり、CS20頃には滑車が形成し始める10)。また、CS14で眼胞の周囲に4つの間葉組織がみられ、それらに向かって4つの直筋が伸長し、最終的に各直筋が対応する間葉組織に入り込む形で眼球に癒合する10)。それらの間葉組織は眼球の強膜の形成に関わってくるとされている。さらに、CS21~CS23にかけて上眼瞼挙筋が上直筋の背内側より分化して発生する10,13)