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中腸ループの形成(生理的臍帯ヘルニア)

中腸ループの形成(生理的臍帯ヘルニア)

消化管のうち中腸部分(十二指腸の後半から空腸、回腸、結腸の横行結腸まで)は、胚子期、腸管、腸間膜の伸長とともに、腸管は一時期、腹腔と連続した臍帯内の空間に脱出する(生理的臍帯ヘルニア)(図10)。腸間のうち空腸、回腸部の伸長が著しく、胎生第6週から8週(CS16からCS23)の間にCRLは約3倍になるのに比べ20倍になる(十二指腸5倍、上行結腸8倍)9

十二指腸は胃の回転と連動してCS13ころ右側凸のCループを形成しはじめ、その末梢側は上腸間膜動脈起始部近傍、尾側に位置する。同部位は腸ループの立ち上がりの位置となり重要である。

CS13ころから形成され始める腸ループの先端はCS16に、回盲部はCS17に臍帯内に入り、CS18では約90度回転し、回盲部は臍帯内では上腸間膜動脈の左側に位置する。相対的にまっすぐな円筒状の物が伸長や回転をし、複雑に折れ重なって成人の配置になる。(2このような肉眼的変化を理解するためには、上腸間膜動脈という、腸に栄養を与えている動脈が鍵となる。


1次ループの形成

伸長とともに腸ループは単純な1次ループから2次、3次のループを形成する。腸ループ先端は卵黄腸管があり、通常閉鎖するが、成人においてメッケル憩室として残存することがある。CRL40mmに成長すると消化管は腹腔内に急速に還納され始めるとされていたが、実際は消化管の還納開始の前のCRL30mmすぎから臍帯内での消化管や上腸間膜動脈の位置の変化等の十分な準備期間がある[56]。腸ループの立ち上がりの位置の異常が、腸管の回転異常を含む位置異常の原因とされている。空腸は腹腔の左側、回腸、回盲部は右側へと配置される。還納後、左側結腸は比較的早く位置が定まるが、右側腸はやや遅れる。

消化管生理的臍帯ヘルニアの機序は不明である。腹腔から肝臓に押し出されて臍帯に脱出するという説があるが、肝臓無形成の個体でも生理的臍帯ヘルニアがみられることから、正しくない10(図11)。

また、還納時の様式についても、古典的な一括モデル、Slide and stuckモデル(Soffers et al 2015)等があり、決着していない。

還納時の力学的な問題(腸を引っ張ったり、押したりする力が発生しているか)も未決着である。