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肝臓の形成

肝臓の形態形成

肝臓の原基である肝芽は胎生第3週中頃に(CS7-8)に、前腸(食道・胃・十二指腸・肝臓・膵臓・胆管系に分化する)から内胚葉性上皮芽として現れる。肝芽は急速に増殖する細胞索で構成され、横中隔(心膜腔と卵黄嚢柄との間の中胚葉板)に進入しながら成長を続ける11

肝細胞索が横中隔に進入している間に、肝芽と前腸の間は腔が狭くなり、胎生第4週初め(CS11)には胆憩室が形成される。胆憩室からは腹側方向に胆嚢と胆嚢管が形成される12

肝細胞索は左右の卵黄嚢静脈及び臍静脈と混じりあい、肝シヌソイドを形成する(図 12)。そして、肝細胞索は肝実質(肝細胞)、胆管細胞へと分化する。肝臓の形態形成過程の特徴を頭尾、背腹、左右軸方向の3方向で評価すると、CS17までは左右軸方向への成長が目立ち、CS17からCS19の間は頭尾軸方向への成長が顕著であり、CS20以降は全方向へ、ほぼ均等に成長していく13(図13)。

器官により陥凹形成がみられることから隣接器官の発生を知る手がかりとなりうることが挙げられる13(図14)。

胚子期の肝臓の役割は、代謝機能と造血機能である。代謝機能は肝臓の機能の中でも重要であり、最も早く発達し始める7。胎生期には、胆汁の生成(第12週中)3、アルブミンの生成、グリコーゲンの合成・貯蓄、酵素系の発達の促進など種々の代謝を担い、胎児全体の成長に大きく関係する15。また、第6週以降には卵黄嚢に代わって主な造血器官となり、胎児期早期には赤血球のほとんどが肝臓で生成される7。このことから血液が集中し、肝臓は出生児には胚子の全体重の約5%だが、第10週時では約10%を占める2

肝臓内の血管の形成

一方、肝細胞索は横中隔に進入する際、臍静脈・臍腸間膜静脈と錯綜し、肝シヌソイドを形成する2。4週末になると左右の臍腸間膜静脈は上からsubdiaphragmatic anastomosis(S-D.A.)、subhepatic anastomosis(S-H.A.)、dorsal anastomosis(D.A)の3つの吻合でつながり、成長する肝臓によってS-D.AとS-H.A.の間の吻合を破壊され、細静脈によってシヌソイド叢とつながる。臍腸間膜静脈の外側を臍静脈が走行していた臍静脈は右臍静脈の末端は消滅し、左臍静脈はS-H.A.の左角に末端を移動する。この時期は”symmetric stage”と呼ばれている。6終末には左卵黄嚢静脈、D.A ーS-D.A間の臍腸間膜静脈が消失することで門脈系を形成する10。一方、肝上方では下大静脈や肝静脈が発生する。肝静脈は最初に右肝静脈、次に左肝静脈が形成され、さらに中肝静脈が左肝静脈から分岐する8。また、S-H.A.の左角と下大静脈の原型である血管をつなぐ静脈管が形成され、静脈管は臍帯から心臓へのバイパスとなる。以上のことから最終的にはすべての血管が下大静脈を通して右肝心臓路につながり、胚子内のすべての血液は肝臓を経由する。よって、肝臓は循環系として果たす役割も大きいといえる10

肝臓の解剖と門脈、静脈管の形成

成人の肝臓は右葉・左葉・尾状葉・方形葉の四葉に分かれている。解剖学的な右葉と左葉は、肝鎌状間膜・肝円索(臍静脈の遺残)・静脈管索(静脈管索)で区分される。方形葉と尾状葉は右葉にし、肝門部で区分される。機能的な右葉と左葉は、カントリー線(胆嚢窩と下大静脈の中央を結んだ線)で区分される。両葉はさらに血管分岐に従っていくつかの肝区域に分けられ、それらは肝臓の部分切除の際に重要となる。

これらの肝葉の形成は、胎児期の静脈の走行に基づいて理解することができる。胎児期では、成人における静脈管索・肝円索は、静脈管・臍静脈という胎児循環として肝臓内を走行しており、母親からの血液を心臓に送るバイパスの役割を果たしている。故に、胎児の肝内静脈走行は、臍静脈から静脈管、右肝心臓路(下大静脈)への経路が確立されており、また静脈管と臍静脈の接合部(Umbilical Portion)より門脈が発生している。(図1)肝門と胆嚢で右葉、臍静脈と静脈管で左葉、肝門で方形葉と尾状葉に分葉される。(H型に分葉)

 

尾状葉