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網嚢・Infracardiac bursa (ICB) の形成

網嚢の形成

図9. 網嚢の形成過程 (兵庫医科大学 中村 達郎博士より提供頂いたものを掲載) CS:Carnegie stage

網嚢の発生は胚子期に右肺芽と食道を隔てている右肺腸陥凹と肝臓と胃を隔てている肝腸陥凹と呼ばれる2つの間膜内陥凹が起源となっている(図9)。この一続きの陥凹は胃の回転につれて、背側胃間膜内に進展していき、胃と背側膵を隔てる膵腸陥凹が形成される6。その後、横隔膜の閉鎖により右肺腸陥凹の頭側部分は切り離され心臓下包となる7。さらに、背側胃間膜は尾側へエプロンのように垂れ下がり、その間には膵腸陥凹から連続して大網陥凹が進展する。この陥凹が後に癒合することで大網が形成される8

Infracardiac bursa(IBC)

Netterの解剖図では食道胃接合部の右側には主に食道裂孔下の脂肪輪や横隔食道靭帯といったもののみが記載されており、閉鎖腔の記載はありません。これはその他の現代の著名な解剖書においても同様です。過去には1952年に死体解剖を元にした解剖図でこの空間をinfracardiac bursa(ICB)として記載した成書は存在しますが、この解剖図でICBは横隔膜より腹腔側かつ横隔食道靭帯の内部に描かれております。Netterの解剖図でいいますと、このあたり食道裂孔下の脂肪輪の直上に描かれております。内視鏡手術で認識される閉鎖腔は食道右側で横隔膜付着部より胸腔側に観察されますので、この解剖図とは位置関係が異なります。 そもそも、このICBという空間は発生学において1904年にBromanにより名付けられた空間です。1938年の彼の報告では、網嚢の発生は食道・胃と右肺・肝臓を隔てる一続きの陥凹がもとになっており、(click)それらは右肺腸陥凹、肝腸陥凹、膵腸陥凹と名付けられております。さらに、その発生過程で(click)横隔膜の形成により陥凹の最も頭側に位置する右肺腸陥凹から分離された空間がICBです。また、過去の報告ではこのICBは発生過程で消退する個体があり、その遺残率は50-80%とされています。

横行結腸の腸間膜について

横行結腸の間膜と大網が癒合する。膵臓、十二指腸、胃と繋がる。胃、十二指腸と癒合した(出生時)大網を介してつながるより以前に胃と横行結腸は並走している